離婚協議書を公正証書にするメリットとは?
「公正証書」とは、普段聞きなれない言葉ですが、公証人という法律家が作成する、
裁判所の手続きなしに強力な効力のある強制執行が可能な書面のことをいいます。
離婚時の取り決めにお互いが合意した場合に、「離婚協議書」を作成しますが、
ただ書面にしたというだけでは不十分なのです。
この書面だけでは、相手が養育費の未払いをした場合に、
支払いを強制するためには、調停や裁判を起こさなければならず、
手間と時間がかかってしまいます。
しかし、「公正証書」には必ず、
「約束どおりに養育費の支払いを行われなかった場合には、強制執行を受けても依存ありません。」
というような強制執行認諾条項というものを入れます。
この条項を入れておくことで、約束どおりのことが守られなければ、裁判所を通すことなく、
相手の給与や預貯金、不動産等に強制執行をかけることができるようになります。
強制執行認諾条項の入った「公正証書」を離婚時に作成しておくことで、
相手は心理的プレッシャーを感じ、養育費未払いが起こる可能性はそれだけ少なくなるのです。
★公正証書作成のメリット
① 高い証拠力がある!
公証人は、元々が検察官や裁判官等の法律の専門家であって、
法務大臣が任命した公務員です。
公正証書は、その公証人が作成した公文書ですから、
裁判所での争いになった場合、当事者本人の意思で作成した書面であると即時に認められます。
② 裁判を起こすことなく強制執行を行うことができる!
もし、契約の相手方が契約書に記載された金銭の支払い等の約束を破った場合、
最終的に相手の給与や不動産を差押えて、強制執行を行うことになります。
しかし、強制執行を行うには、確定判決や調停調書等の債務名義を必要とします。
債務名義を取得するためには、通常、裁判や調停を起こす必要があり、
時間や手間がかかってしまいます。
しかし、公正証書も債務名義の一つですので、公正証書を事前に作成しておくことで、
裁判を起こすことなく強制執行の手続きを行うことができます。
但し、公正証書により強制執行を行えるのは、養育費や慰謝料等の金銭の支払いのみとなります。
なお、強制執行を行うことができるのは、「強制執行認諾条項」の入った公正証書だけです。
ですから、公正証書作成時には、
必ず「強制執行認諾条項」入れておかなければなりません。
「強制執行認諾条項」とは、金銭の支払い義務のある債務者が、
公正証書に記載された約束を履行しない場合には、
自身の財産から強制的に回収されてもかまわないということを事前に認める約束の事をいいます。
③ 債務者に対して心理的圧力をかけることができる!
上記のとおり、公正証書には高い証拠力があり、
約束を守らなければ強制執行を受けてしまいますので、
債務者に対して心理的圧力をかけることができ債務の履行を促すことに繋がります。
また、連帯保証人を付けておくことで、
連帯保証人に対しても強制執行をかけることが可能となり、
債務者が連帯保証人に迷惑をかけたくないと思うのであれば、
未払い抑止効果をより一層高めます。
④ 公証役場で20年間保管される!
公正証書は、原則として公証役場で20年間保管されることになっています。
(ただし、保管期間満了後も特別の事情により保管の必要性があるときは、
その事由がある間は保管しなければなりません)
よって、紛失した場合には、公証役場で再発行をしてもらうことが可能です。
これらのメリットにより、離婚条件を公正証書で作成しておくということは、
離婚後の安心を手に入れることに他なりません。
但し、公正証書の作成だけで、将来に渡って、
支払いが100%確保されるというものでもありません。
よって、そのことを見据えた書面内容を十分に考えることが重要となります。
★ご自身で作成される場合の手続の流れ
① 夫婦間で合意した内容を基に公証役場で打ち合わせを行う。
公証役場は仲裁の場ではありませんので、離婚協議の内容を相談することはできません。
お互いが合意した内容を公正証書にしてもらうところです。
よって、公証役場に打ち合わせに行く際には、
合意事項がある程度まとまっていなくてはなりません。
合意事項については、契約書のような書面にしておく必要はなく
箇条書きで書いたメモを持参することでも構いません。
公証人がその合意事項を確認して文章を起案してくれます。
但し、公証人は、夫婦の個別具体的な事情を細かく聴くことなく作成をしますので、
その奥底に隠された将来起こりうるリスクに
対応できていない内容となってしまう場合もあります。
ですから、相手の信用性に疑問がある場合などは離婚協議の時点で、
その点を踏まえて細かな点までしっかりと合意しておかなければなりません。
公正証書作成の打ち合わせから作成までには、
平日に2~3回程度公証役場に訪れる必要があります。
公証役場の営業時間は、
原則として通常の役所と同じく午前9時~午後5時までとなっています。
公証役場へ行く際に準備しておくもの |
参考までに、当事務所がよく利用する公証役場についてご案内しておきます。
ちなみに、お勧めは和歌山公証人合同役場です。
(事務員さんが親切丁寧に対応してくれます)
公正証書は、どの公証役場で作成しても構いません。
当事務所は、ご依頼者様に支障がなければ和歌山公証人合同役場を利用しています。
①岸和田公証役場
〒596-0047
大阪府岸和田市宮本町2番29号 ライフエイトビル3階
TEL 072-422-3295 FAX 072-422-4649
地図はこちら
②和歌山公証人合同役場
〒640-8157
和歌山市八番丁11 日本生命和歌山八番丁ビル3階
TEL 073-422-3376 FAX 073-431-1535
地図はこちら
② 公証人による証書作成
打ち合わせが終わりましたら、公証人が公正証書の原案の作成を行います。
この原案の作成には数日がかかります。
原案ができましたら、公証役場の事務員より連絡が入りますので、
FAXでのやり取により内容を確認することも可能です。
③ 公正証書の作成
公正証書の作成には、原則として当事者が公証役場に出頭する必要があります。
公証役場では、当事者の面前で公証人が内容を読み上げてくれます。
公正証書の内容に問題がなければ、当事者が公正証書の原本に署名・押印をします。
これで、公正証書は完成し効力が発生します。
公正証書は、公証役場で保管される原本の他に、正本と謄本が作成されます。
正本は強制執行を行うことになる債権者、謄本はその相手方が持ち帰り保管することになります。
④ 公証人手数料の支払い
最後に公証人手数料を支払います。
公証人手数料は、公証人手数料令により定められた公正証書作成時に支払う費用です。
下記の費用の他にも、証書等の交付手数料(用紙1枚につき250円)等がかかります。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以上 | 5,000円 |
100万円を超え 200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え 500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え 1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え 3億円以下 | 4.3万円に超過額5,000万円までごとに1.3万円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 9.5万円に超過額5,000万円までごとに1.1万円を加算 |
10億円を超えるもの | 24.9万円に超過額5,000万円までごとに8千円を加算 |
ご自身で作成する自信のない方へ |